進歩性判断における特徴対比について

リリース日:2025-12-25

出典:未知

概要:進歩性は特許出願が登録するための不可欠な条件の一つである。一方、請求項に記載されている技術的特徴の特徴対比は、進歩性判断の基礎である。ある特徴が公開されているか否かを判断するには、特徴そのもののみに着目するのでなく、その特徴の技術全体における働きを考察しなければならない。

進歩性を備えることは、登録の必須な要件の中の一つである。ところが、進歩性判断にはある程度主観的な要素を構えており、主観性による判断の誤差を避けるために、現行の「審査指南(2010)」の第二部分第四章第3.2.1.1節において、進歩性の判断方法が記載されている。すなわち、通常呼ばれている「三歩法(Three-Step-Method)」である。「三歩法」を持って、より客観的且つ正確に進歩性を判断することに当たって、最も基礎的なものは、一番近い引用文献との特徴対比である。したがって、正確な特徴対比を行うことが極めて重要である。それでは特徴対比を行う際に、注意しなければならない問題、どのような要素を考慮すべきであるのでしょうか。

本稿は、2017年の10大審判案件の一つである「バックライトユニット及び液晶ディスプレイ装置」を発明の名称とする拒絶査定不服審判案件を例に、如何に特徴対比を行うかについて検討する。

一.事件の概要
(一)事件の基本情報
発明の名称:バックライトユニットおよび液晶ディスプレイ装置
出願日:2014年11月21日
出願番号:201410676241.8
拒絶査定日:2017年2月16日
審判請求日:2017年4月28日
審判事件番号:1F220646
拒絶理由:すべてのクレームの進歩性欠如
引用文献:CN1637511A

(二)対象特許と引用文献の情報
本願クレーム1:
バックライトユニットであり、
相互対向するように設置されている第一基板と第二基板、
第一基板に設置されている発光素子アレイ、
発光素子を発光させる駆動回路、
第二基板の第一基板に対面した側に塗布された蛍光体層、及び
第一基板と第二基板を密封した封止フレーム、を含み、
その中、第一基板、第二基板及び封止フレームが中空腔を形成し、
発光素子アレイと蛍光体層はその中空腔に設置され、且つ発光素子アレイと蛍光体層が間隔を置いて設置されている。

表1——対象特許のクレーム1

引用文献1(CN1637511A)は、電界放出型バックライトユニット、その駆動方法、および下部パネルの製造方法を公開した。具体的には、下部基板111、上部基板121、第一電極112、第二電極114、電極に予定の電圧を印加する(カーボンナノチューブ(CNT)エミッタ116、駆動)、蛍光体層123、スペーサー130等の特徴を公開した。
 
表2——引用文献1

(三)審査意見の概要
1、実体審査段階
審査官は、上記の理解に基づき特徴対比を行い、引用文献1には蛍光体層及びそれに対応する設置の構造が公開されたと判断した。相違点としては、対象特許は、発光素子の発光を駆動している駆動回路、第一基板と第二基板の間に設置された封止フレームとを含むことであると判断した。

上記の相違点から見れば、本願発明が解決しようとする課題は、如何に需要に合わせて適切なバックライトを設計するかのことである。

上記の相違点について、発光素子を発光させるために駆動回路を設置することや、第一基板と第二基板の間に封止フレームを設置することは当業者にとって容易なものであり、その効果が予想できると判断した。
したがって、クレーム1が進歩性を欠如するとの結論になった。

2、審判段階
拒絶査定不服審判において、合議体は、対象特許と引用文献1に対してもっと全面的に突っ込んだ考察を行った。

表3——合議体の対象特許に対する理解

対象特許を再度考察することでわかるように、対象特許の本質は、伝統的な線状光源と点状光源、たとえば発光素子アレイに対する改良であり、発光素子アレイに光子を発生させることにより発光させ、蛍光体層を励起して発光させ、それにより発光の均一性を確保する。言い換えれば、蛍光体層がない場合でも対象特許のバックライトユニットが発光でき、蛍光体層の働きは発光できるユニット、すなわち発光素子アレイとの共同作用で発光の効果を改善させ、構造を簡潔化することである。要するに、対象特許のポイントは、発光素子アレイ11は発光するための光源であり、蛍光体層は光を均一させる目的のものということである。

表4——合議体の参引用文献1に対する理解

引用文献1に対し全面的な考察を行うことで分かるように、引用文献1の中の蛍光体層123は発光素子の構成部分であり、第一電極112、第二電極114、第三電極122及びカーボンナノチューブエミッタと共同で発光の機能をしている。即ち、これらのものは引用文献1で光源を構成するものである。

したがって、対象特許と引用文献はいずれも蛍光体層を記載しているが、発光の原理が異なるため、蛍光体層の機能が異なることでバックライトユニットの異なる部分として存在している。即ち、対象特許で蛍光体層は光の均一性を確保するために存在しているが、引用文献1では発光の働きをしている。したがって、この両者に対して、同じまたは対応する部分と取り扱うことができない。したがって、全体的に見れば、引用文献1は、対象特許の蛍光体層及びその設置構造について公開していないと判断する。

合議体はこれを踏まえ、クレーム1と引用文献1の相違点について下記の見解を示した。対象特許は、①蛍光体層は第二基板に塗布されている、②第一基板に設置されたのは発光素子アレイである、③駆動回路は発光素子を発光させる、④蛍光体層は発光素子アレイとともに第一基板、第二基板及び封止フレームによって囲まれた中空腔に位置し、間隔を置いて設置されている、等の特徴を有する。つまり、引用文献1は対象特許の蛍光体層及びその関係する設置構造について公開していない。合議体はこれを理由に当業者が引用文献1のバックライトの原理を変え、引用文献1の発光構造から対象特許の発光構造に変更する動機付けがないと判断した。つまり、当業者は引用文献1を基に、対象特許の技術案を変更する動機付けがないと判断した。

合議体は最終的に拒絶査定を取り消す審決を下した。

二.事例の分析
本事例の焦点は、引用文献1において、対象特許の蛍光体層及び関連の設置構造が開示されているか否かにある。実体審査の過程では、審査官はポイント・ツー・ポイントで特徴を対比し、引用文献1に蛍光体層が開示され、且つ設置場所も対象特許と似ていることだけに着目し、技術案を全体的に把握し突っ込んで考察を行わなかったため、的確な判断を下すことができなかった。

反面、審判の過程では、合議体が対象特許と引用文献1に対し全面的な考察を行い、その上特徴対比を行ったため、対象特許の蛍光体層の機能が発光ではない光の均一性を保つことであり、それに対し引用文献1の蛍光体層は光源の一部を構成し、その働きが発光だという正しい認識をすることができた。事実を全体として全面的に把握することにより、対象特許と引用文献はいずれも蛍光体層を記載したものの、両者の働きがまったく違うということが分かり、それにより的確に特徴対比を行うことができ、進歩性の有無について的確に判断することができたのである。

本事例の焦点は、特徴対比の過程におけるありがちな考え方を浮き彫りにし、それと同時に審判段階の審決はわれわれの実務家に対して大きな啓発を与えた。特徴対比は、進歩性判断の重要な一環である。ある特徴が公開されているか否かを判断するには、特徴そのもののみに着目するのでなく、その特徴の技術全体における働きを考察しなければならない。当業者の立場から、もっとも近い従来技術の原点に立ち、技術に対する事実を明らかにし、保護を求めようとする技術案とそれにもっとも近い従来技術が公開した技術案を的確に理解し、両者の特徴上の差異を正確に認定することが必要であると思われる。当業者の立場に立ち、発明の技術的本質をつかめるこそ、クレームを的確に理解し、その後の進歩性を正しく評価することができると思われる。 

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